楠甫
途中バス停だったものが、突然に終点になった時だけに醸す哀愁、
それは経緯を知っている者だけが感じる妄想。
この先さらに、別の市町村まで続いていたバスの営み。
ここまでが残された想い、それすらも終焉に導く残酷は、時の流れか無情か。
入江の奥にひろがる平地が、川の両岸になって、橋が架けられて、
新しい道はただ、ふたつの都会だけを繋ぎ、周縁部は顧みられなくなってゆく。
楠甫。
最末期は、朝と夕に1本ずつ。
桜が咲く季節に、
別れとはだいたいやってくるようにできています。4月が選ばれたのはいつからなのか。
車が停まっていたはずの場所にバスが。
静かに時を過ごして、本渡までいくつか旧道を拾いながら戻ります。
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